なぜ自民党との連立を解消したのか。与党という立場を失ってでも、守るべき信念とは。

斉藤鉄夫 公明党

公明党が10月10日、自民党との連立解消を表明した。今回の記事は、公明党の立場に立って事実関係と考えを整理する。短時間で経緯を把握したい人、どう受け止めるべきか迷っている人に向けた、公明党視点のまとめだ。

連立を離れる決定的な理由は、政治資金規正法をめぐる公明党案をその場で飲めなかったことにある。党首・幹事長会談は約1時間半行われ、元々は地方組織の声を自民党側に伝える場として設定されていた。しかし協議の途中で、公明党は政治とカネの問題を「一丁目一番地」として、公明案への賛否をその場で示すよう求めた。自民党側は部会や政調審議会、総務会などの正式手続きを理由に即答を避け、数日の協議時間を求めた。公明党としては、裏金・不記載問題で揺らいだ政治への信頼を立て直すためには、曖昧な先送りではなく具体的なコミットメントが不可欠だったと判断し、「具体的な回答ではない」と受け止めて離脱を通告した。

この決断は個人の好き嫌いでも、総裁が誰かという人事の問題でもない。支援者・地方組織から繰り返し上がってきた声は、政治資金の透明化と再発防止策を明確にし、第三者の監視機関を実効性あるかたちで制度化してほしいというものだった。企業・団体献金の扱いも含め、政治資金の受け皿や流れをどう設計するかが核心だ。長期の連立関係を尊重してなお、公明党はここで曖昧にすれば「政治はまた同じことを繰り返す」という諦めを広げるだけだと考えた。だから即答を求め、即答が得られなかった以上、支援者の信頼を守るために離れる以外の選択肢はなかった、という整理になる。

政策全体の見取り図でも、公明党として譲れないラインははっきりしている。福祉・教育・子育て支援、医療・介護、物価高対策や中小企業の下支え、被災地の復旧・防災投資の加速――生活を守る分野で成果を積み上げてきた自負がある。同時に、外交・安全保障では抑制と現実主義を両立させ、地域の平和と人道に目を配る立場をとってきた。憲法改正や防衛拡充を巡っては、多数の国民が納得できる丁寧なプロセスと十分な説明が前提であり、拙速に賛否を迫るやり方には距離を置く。今回の離脱は、そうした基本姿勢を崩さず、政治資金の信頼回復を最優先に置いた結果でもある。

選挙協力を含む実務面での負荷は十分承知している。小選挙区での調整がなくなれば短期的に厳しい局面は避けられないし、首班指名や重要法案の採決でも、これまでの自動安定運営は期待できない。それでも、公明党としては「支援者に対して説明可能か」「国民の政治不信を本当に和らげられるか」を優先した。結果として、連立のために積み上げた妥協が、生活者の目線から見て筋が通るのかを改めて問い直した、と言い換えてもいい。

国土交通行政についても触れておく。公明党が長く担ってきたポストで批判があることは承知しているが、一方で公共交通の維持、物流や観光の回復、災害対応、インフラ更新など、地道な実務で成果を積み上げてきた現場があることも事実だ。評価は分かれるだろう。だからこそこそ、連立という枠組みに甘えるのではなく、政策と実行力で改めて信頼を勝ち取る道を選んだと理解してほしい。

今回の選択が「良かったか悪かったか」を二択で言えば、公明党としては「長い目で見れば良い」と考える。短期的には痛みがある。だが、政治資金のルールを出発点から作り直し、透明性と第三者チェックを骨格から強化できれば、政治全体の信頼は取り戻せる。外交・安全保障でも、抑制と現実主義を軸に、国民の安心と地域の安定に資する落としどころは作れる。連立という安全地帯から一歩外に出ることはリスクだが、支援者の声に正面から向き合い、政策で評価を受ける政党であり続けるための必要経費だと割り切る。

結局のところ、問われているのは「誰と組むか」より「何を実現するか」だ。政治とカネの問題を片づける。生活を守る政策を積み重ねる。平和と人道の視点を失わない。公明党はその順番を違えない。今回の離脱は、その順番を守るための決断だった。支援者に対しても、国民に対しても、説明責任を果たしながら、次の一歩を着実に進めていく。

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