参政党初鹿野裕樹何があった?嘘をついた?歳費返納問題について解説

初鹿野裕樹 参政党

参政党所属の参議院議員・初鹿野裕樹氏(47)が当選前に掲げていた「議員歳費を返納する」との公約を、事実上撤回したことが波紋を広げている。初鹿野氏は神奈川県選挙区から2025年7月の参院選で初当選を果たした新人議員であり、元警視庁の警察官という異色の経歴の持ち主だ。SNSを積極的に活用し、クリーンなイメージや「政治と金の問題に決別する」という強い姿勢を示したことで注目を集めていた。

問題の発端は、当選前の2025年1月に自身のX(旧Twitter)で行った投稿である。初鹿野氏はそこではっきりと「政治と金の問題が取り沙汰される中、私が国会議員になった暁には国会議員歳費・旅費及び手当等に関する法律を改正し、歳費を返納します。お金のために議員を目指すのではない証として堂々と宣言します」と述べていた。この発言はメディアでも取り上げられ、「お金のために政治をやるのではない」とする潔さが有権者の支持を呼び、選挙戦における追い風となったとみられる。

ところが、当選からわずか2か月後の9月17日、週刊誌「女性自身」の取材に応じた初鹿野氏は、歳費返納の約束について大きくトーンを変えた。氏は「かつて参議院に歳費返納制度があったことを念頭に、法改正がなされれば返納するという趣旨で発信したものです。現行制度では議員が個人判断で歳費を返納することはできません」と説明した。さらに「投稿によって直ちに返納するとの誤解を招いたのであればお詫びします」と釈明。実質的には、返納を実行する意思がないことを明らかにした。

この発言が伝わると、SNSを中心に批判が噴出した。神奈川県の有権者からは「こういう嘘は許せない」「1年も経たずに約束を撤回するのは裏切りだ」といった声が寄せられ、参政党内外からも「党として処分が必要ではないか」「少なくとも厳重注意は不可避だ」との意見が出た。ネット上では「やろうと思えば歳費を寄付するなどの方法はいくらでもある」「結局はやらないと決めただけ」「見事な手のひら返しだ」といった批判が目立ち、関連ワードがXのトレンドに入る騒ぎとなった。

一方で、「制度上、確かに国会議員が勝手に歳費を返納することは不可能」「制度を理解せずに公約を受け取った有権者にも責任の一端がある」といった擁護の声も一部には存在する。しかし、当選前に制度上の制約を十分に説明せず、「返納する」と断言した事実そのものが有権者に誤解を与えたことは否定できない。

今回の問題が示しているのは、公約という言葉の重みだ。選挙戦において公約は、有権者の投票行動を左右する最重要の要素である。その公約が、制度上できない、あるいは誤解を招いたと後から説明されれば、有権者は「騙された」と感じるのも当然だろう。とりわけ、初鹿野氏のように「政治と金の問題に決別する」という清廉な姿勢を前面に押し出して支持を集めた候補者にとって、今回の撤回は信頼性に直結する大きな痛手となる。

参政党はSNSを通じて若年層からの支持を広げてきた政党であり、今回の件は党全体のイメージにも影響を及ぼす可能性がある。「期待して投票したのに裏切られた」という有権者の失望感は、他の候補者や次回の選挙にまで波及するだろう。今後、党執行部がどのような対応を取るのか、また初鹿野氏自身がどのように説明責任を果たすのかが注目される。

確かに「制度的にできない」という側面は存在する。しかし、だからといって「返納する」と断言した責任は消えない。政治家は言葉で信頼を勝ち取り、言葉で信頼を失う存在である。今回の件で「仕方がない」と割り切る有権者もいるだろうが、それによって「もう信じられない」と感じる人が増えても仕方がない。

初鹿野氏には、今回の反省を踏まえ、誤解を与えるような発信を二度と行わず、実効性のある改革に取り組むことで信頼を取り戻してほしい。政治家にとって最も大切なのは、約束を守ることと誠実であることだ。その基本を忘れれば、どんな立派な政策も市民の心には響かない。

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