国民民主党や参政党(他の党にもありますが全面に出している2党を挙げる)の公約の中でよく議論されているのが外国人土地取得問題です。
外国人土地取得規制法は土地価格の高騰抑制、防衛施設・水源の保護などを理由として必要性を示しています。しかし他国との条約で外国人のみを規制出来ないこと、個人の取引を制限してはいけない、規制をすると一気に値崩れしてしまうなどの懸念があり、進展がない状態となっています。そんな中、内閣府の資料から現状がどれほど危険なのかわかるデータが見つかったのでこの記事にまとめています。
この議論の出発点になっているのが、内閣府が公表した「重要施設周辺等における土地等の取得の状況(令和5年度)」だ。調査対象は、第1~第3次の指定で計399区域。2023年度中(区域ごとの施行時期に応じた期間)に確認された取得は16,862件で、そのうち外国人・外国系法人による取得は371件(2.2%)。国・地域別では「中国(香港含む)が203件で最多、全体の54.7%」を占めた。
別表を精査すると、取得の“場所”に偏りがある。東京都では防衛省(市ヶ谷庁舎)周辺で104件、補給統制本部周辺で39件、練馬駐屯地周辺で20件が確認された。千葉県でも下総航空基地周辺で7件など、航空・陸自拠点の周辺にまとまった取得が出ている。安全保障上の重要拠点の周辺で、外国人・外国系法人の取得が一定数集中的に起きている構図が、初めて政府の公式資料で可視化された。これまでは未然の対策と各事例で問題視されていたが、全体として正確な政府のデータにより明らかとなったことはおそらく初めてである。
念のため説明しておくと、外国人が土地取得した場合その土地でどんな準備をしていてもわからない。例えば自衛隊基地周辺でミサイルを準備していても分からないようになっている。特に中国では国防動員法があり、中国人は中国のために活動し、所有する土地等も含めて中国政府に協力する義務を負います。なので中国政府が自由にできる土地がとんでもないスピードで増えていることを理解できるとOKです。
一方で、「外国人だけ」を一律に制限する立法には国際約束の壁がある。WTOのサービスの貿易に関する一般協定(GATS)は内国民待遇(第17条)を定め、日本は加盟時に土地取得分野で差別的制限を認める留保を付けなかったため、国籍のみを根拠にした包括的な禁止はGATS違反のリスクがある。というのが政府の一貫した整理だ。
それでも政策の余地はゼロではない。GATSの一般例外や安全保障例外の射程内で、リスクの高い区域・用途に限定した措置を丁寧に設計すること、あるいは税・開示・事前審査といった差別性の小さい間接措置を積み上げるアプローチが現実的だ。海外の先例も参考になる。シンガポールはResidential Property Actにより、外国人が土地付き住宅(いわゆる“landed”)等を取得する際、政府の承認を要する承認制を長年運用している。
また、カナダは住宅価格高騰への対策として、外国人による住宅購入を原則禁ずる時限立法を採用し、適用期間を2027年1月1日まで延長した。目的・射程・例外の設計は日本とは事情が異なるが、「直接禁止」や「時限措置」「対象限定」といった政策メニューが現に各国で使われている事実は示唆に富む。
日本国内法の現状では、重要土地等調査法に基づいて、注視区域・特別注視区域内での利用状況の調査や勧告までは可能だが、取得そのものを包括的に規制する権限は与えられていない。今回の内閣府公表は、まさにこの法律に基づく初の本格集計で、区域の追加(第4次指定分は調査対象外)やデータ更新の度に、分布や傾向が変わり得る。政策判断には継続的なモニタリングが不可欠だ。
リスク認識の文脈では、中国の国防動員法や国家情報法などの法体系がしばしば議論に上がる。平時からの動員準備と有事の動員実施を法制化したとされる国防動員法、およびあらゆる組織・個人に国家情報活動への協力義務を課すとされる国家情報法(第7条)は、企業活動や資産管理を巡る安全保障上のリスク検討において参照されている。日本の国会でも度々取り上げられ、域外適用の可能性を含めた影響が問題提起されてきた。
以上を踏まえ、今回の論点を整理する。第一に、政府統計は重要施設周辺での取得が一定規模で生じ、国別では中国(香港含む)が最多である現実を示した。第二に、立法はGATS整合性という高いハードルを越える設計が必須で、区域・用途の限定や間接措置、相互主義の活用が実務的選択肢になる。第三に、データの継続更新と区域の見直しが政策の根拠を強化する。参政党はこの枠組みを踏まえ、秋の臨時国会を視野に具体案の詰めを急いでいる。焦点は、どの区域で、どの取得を、どの手段で抑制するのか、他国との交渉はどのように進めるのかです。参政党は口だけではなくしかりと実現できるのか、しっかりと見極めていきましょう。