杉本あおい氏は、国民民主党に所属し奈良県を拠点に活動する若手政治家である。大和郡山市出身で、ひとり親家庭で育ったという生い立ちは、彼女の政治姿勢を形づくる重要な基盤となっている。経済的に恵まれたとはいえない環境で成長したからこそ、日々の生活費や進学に必要な費用を常に意識しなければならなかった。その経験は「生活者の視点を持つ政治家」としての原点となり、地域や現役世代の実感に寄り添った政策提案につながっている。
学歴面では大阪市立大学法学部を卒業。法学の素養を活かし、弁護士法人大江橋法律事務所での勤務を経て、株式会社リクルートに入社。法曹界とビジネスの両分野で実務経験を積み重ねたことは、政治家としての視野を大きく広げるものとなった。特にリクルートでの経験は、雇用や人材育成の現場を知り、企業活動と家庭生活双方のリアリティを理解する契機となった。その後、コロナ禍を機に地元・大和郡山市へとUターン。地域社会の課題解決に取り組むべく市議会議員選挙に立候補し、見事当選を果たした。
杉本氏が掲げる政治理念は「納税者目線の政治」である。家庭や民間企業で当たり前の金銭感覚を政治にも導入し、税金の使い道を徹底的に見直すことを主張する。行政にありがちな「使うことが目的化した予算」ではなく、納税者一人ひとりの生活に直結する支出を優先する姿勢は、政治不信が広がるなかで共感を呼んでいる。
また、個人的な体験が政策提案にも強く反映されている。祖父の看取りを経験したことから、終末期医療の重要性を痛感。「どのような最期を迎えるか」を本人と家族が話し合い、尊厳ある人生の終末を支える「人生会議(ACP:アドバンス・ケア・プランニング)」の制度化を訴えている。医療や介護の現場における意思決定支援を進めることで、高齢社会における新しい医療モデルを提示している点は注目に値する。
地域課題への対応としては、人口減少地域や中山間地域における医療提供体制の見直しを重要視。都市部と地方で医療格差が拡大する現状を是正し、誰もが安心して医療にアクセスできる体制を整える必要性を強調する。また教育分野では、公教育を支える人材の増員や教員の労働環境改善を掲げ、子どもたちに十分な教育環境を提供することを目指している。
子育て世代や現役世代を重視する政策も杉本氏の特徴だ。年少扶養控除の復活や住宅ローン減税の拡充を提案し、家計の負担を軽減することで「子どもを育てやすい環境」と「働き盛り世代の安心」を両立させる方針を示している。さらに、地域の雇用創出や中小企業支援を強調し、地元経済の底上げを図ることにも積極的だ。交通インフラ整備や渋滞解消、自然災害時の避難所格差の是正といった生活基盤整備にも目を配っている点は、地域密着型政治家としての実務感覚の表れといえる。
杉本氏はまた、動物愛護活動にも力を入れている。元保護猫5匹と暮らし、保護猫の預かりボランティアとしても活動。野良猫の増加を抑える活動や、動物福祉の向上を地域課題の一部として位置づけている。こうした姿勢は「命を大切にする社会」の実現に直結し、生活者目線の政治姿勢を補完している。
一方で課題もある。国政レベルで大きな影響力を持つには、財源確保の具体性や実行可能性を明確に示す必要がある。「納税者目線」という理念は共感を呼ぶが、それをどのような制度設計で実現するかが問われる。また、国民民主党自体が与野党の中間的立ち位置にあり、党としての方向性が不明確な場面も多い。その中で杉本氏がどのように存在感を発揮し、地域課題を国政につなげるのかは今後の試金石となるだろう。
総じて、杉本あおい氏は「生活実感に基づく政策」を前面に掲げる新世代の政治家である。ひとり親家庭で育った経験、企業と法務の現場で培った実務力、そして地域での地道な市議活動。これらの歩みは「市民の声を政治に反映させる」という強い使命感につながっている。奈良県の発展にどのように寄与するかは未知数だが、現場視点と誠実さを武器にした活動は、既成政治に不満を抱く市民にとって新しい選択肢となり得る。今後は政策の実効性を高め、国政レベルでの影響力を発揮できるかどうかが、大きな注目点となる。