奈良県知事・山下真氏の判断に、今、県民の間で強い疑問が広がっています。
その中身とは――県が長年大切に育ててきた「大立山まつり」や「平城京天平祭」といった伝統行事を、あっさりと「一定の役割を果たした」として廃止し、代わりに奈良公園を舞台に〈K-POPライブ〉へと舵を切ったことです。その予算規模はなんと約2.7億円。桁違いの公金投入に、驚きと憤りを隠せません。
■切り捨てられた伝統行事
「ちとせ祝ぐ寿ぐまつり(大立山まつり)」では、四天王像を象った巨大な山車が練り歩き、地元職人たちの技と誇りが込められていました。平城京天平祭も、奈良時代の雅を伝える行列や雅楽の調べが人々を魅了してきました。これらは単なる「イベント」ではなく、奈良の文化遺産を体現するものです。
それを一方的に打ち切り、制作に携わった職人たちの技術や思いをどう扱うのか、県は明確な答えを出していません。税金を投じた成果物が宙に浮き、地域文化の継承が軽視される現状は、県民にとって大きな喪失感をもたらしています。
■K-POP無料ライブの違和感
その一方で、山下知事が推進したのは「国際交流」「若者支援」を掲げるK-POP無料ライブ。確かに、人気アーティストの生のパフォーマンスに触れられる機会は若者にとって貴重です。しかし、県がSNSで発信した「お金のない日本の若者も大好きなK-POPアーティストに生で接することができる」という説明には、耳を疑いました。あたかも奈良の若者が皆、経済的に困窮しているかのような表現は、配慮を欠き、県民のプライドを踏みにじるものではないでしょうか。
■予算縮小の裏にある杜撰さ
当初は2.7億円の予算が組まれていましたが、県議会や世論の反発を受け、最終的には2,900万円規模に縮小されたと報じられています。会場もなら100年会館へと変更され、出演者はK-POPアーティスト3組とトロット歌手、さらに地元学生によるパフォーマンスという形に。
しかし、出演予定の中にはSNSフォロワーが数百人規模のマイナーなバンドも含まれ、「急ごしらえ感」「杜撰な準備」が露呈しました。それでもなお中止にせず、強行する背景には、単なる国際交流では語れない「特別な事情」があるのではないか、そんな疑念すら生まれています。
■奈良ブランドの劣化
奈良といえば、世界遺産・古都の象徴として、歴史と伝統がブランドそのものです。その強みを自ら捨て、海外コンテンツに依存する政策転換は「国際交流」ではなく「奈良ブランドの劣化」と表現すべきでしょう。地元文化を犠牲にしてまでK-POPにこだわる姿勢は、政策的合理性よりも知事個人の趣向や思惑が反映されているのではないか――そう疑う声も少なくありません。
私は強く訴えたい。奈良の宝である伝統文化を守り育てることこそ、税金を投じるべき最優先事項です。K-POPライブに多額の公金をつぎ込むより、地域職人の技術継承や観光資源の磨き上げに投資する方が、長期的な地域振興につながるのは明らかです。
山下知事の「国際交流」という美名の裏にあるものは何か。なぜここまでK-POPに固執するのか。奈良の未来を左右する重大な問いかけとして、県民一人ひとりが真剣に考えなければなりません。
願わくば、この選択が単なる「知事の無類のK-POP好き」に基づくものだったと笑い話で済ませられる日が来ることを祈るばかりです。