皆さまはシャインマスカットをよく召し上がりますか。
私はお祝いなど特別な時にしか食べません。なのでこのニュースを見た時に驚きました。数年前まで一房1,000円を超えるのが当たり前だったシャインマスカットが、今では東京のスーパーで580円まで値崩れしているのです。買いやすくなってうれしい気持ちはわかりますが、シャインマスカットをめぐる騒動は「果物の値段が下がった」という単純な話では終われません。これは日本の農業が抱える制度的な欠陥と、国家の戦略なき政策が露呈した事件です。
この背景には、日本産シャインマスカットのブランド価値を大きく揺るがす海外での無秩序な生産が存在しています。観光農園では「ゴールデンシャイン」のように市場には出回らない希少品種で観光客を呼び込む工夫をしていますが、それも根本的な解決にはつながりません。
最大の問題は海外への苗木流出と、それに対して有効策を打てなかった国の無策です。中国や韓国ではすでに大規模な栽培が進み、しかも「世界に広めたのは自分たちだ」と主張する始末です。中国の通販サイトでは2.5キロ300円で販売され、日本の生産者が長年の努力で築き上げたブランドは、あっさりと値崩れさせられています。さらに韓国産と銘打った商品がベトナム市場に並ぶ光景は、日本の農家からすれば屈辱以外の何物でもありません。
ここで山梨県の長崎知事が声を荒げるのは当然です。彼は小泉農水大臣に「徹底抗戦」と直接ぶつけました。要するに「海外での生産を認め、国内農家の不利益になる政策は断固許さない」という立場です。ところが農水省はニュージーランドでのライセンス生産を検討しているとされます。理由は「海外で管理生産したほうがブランドイメージを守れる」というものですが、現場を知らない机上の空論であり、正直に申し上げて笑止千万です。
問題の根源は、過去に種苗法の管理を怠ったことにあります。シャインマスカットが開発された当初、日本は海外流出を防ぐ仕組みを十分に整備しませんでした。その結果、中国や韓国に種苗が渡り、今や逆輸入のように日本市場を脅かしているのです。農水省は「もう手遅れだ」と諦めの空気を漂わせていますが、だからといってライセンス生産を推し進めるのは自国農業を二度殺す行為に等しいのです。
私は断言します。農水省の政策判断は誤っています。やるべきことは二つです。第一に、輸出ルートを迅速に整え、本物の日本産が正規市場で存在感を示せるよう支援することです。物流や検疫、関税のハードルを国が主体的に突破するべきです。第二に、違法流通や偽装販売を徹底的に取り締まることです。知的財産としての農作物を守る法整備を強化し、違反者には厳罰を課さなければなりません。
農家はすでに限界ぎりぎりです。人手不足、資材高騰、円安による輸入コスト増、そしてブランド崩壊の危機。これ以上の負担を背負わせることは許されません。彼らが必死に守り続けてきた品質を維持するためには、国が本気で盾となるしかないのです。しかし現実には、霞が関は「海外展開」という甘い言葉に酔い、農家を切り捨てようとしています。
この問題はシャインマスカットに留まりません。次に狙われるのはりんご、いちご、米、そして和牛です。いま声を上げなければ、日本の食文化はすべて安値でコピーされ、気づいた時には「日本の本物」が市場から消えているでしょう。
山梨知事の強硬姿勢は批判も浴びていますが、私は全面的に支持します。地方の現場を踏まえたリーダーがここまで強く国に楯突くのは、それだけ危機感が切実だからです。農水省の及び腰な姿勢に屈せず、日本の農業を守る戦いを続けるべきです。そして消費者も「安ければいい」ではなく、「誰がどこでどう作ったか」を意識し、本物を選ぶ責任があります。
日本の特産品は管理が行き届いていて、高品質で海外では人気です。これを中国・韓国にパクられたので、他の国で正式に認可して生産しましょう。正気の沙汰ではありません。日本の農家とシャインマスカットを守るはずが、さらに追い詰めています。この政策で得をするのはニュージーランドと安くで手に入る海外の方のみです。どう考えても不正な流出と生産を止め、本当のシャインマスカットを行き渡らせるべきです。簡単には出来ませんが、完璧でなくとも、出来る限りこの方針を取るべきで、真逆の日本農家殺しは絶対に許してはいけないと考えています。