岩屋外務大臣、中国企業100万円受領は不可解だ

岩屋毅

何度も繰り返し登場する「IR誘致」とは、要するに日本にカジノを含む統合型リゾートを建設する構想のことだ。観光立国を掲げる日本政府は推進姿勢を崩していないが、この政策をめぐっては早くから海外企業による不透明な資金の流れが指摘されてきた。そしてその疑惑の核心に浮上したのが、中国企業「500ドットコム(現BITマイニング)」による日本の国会議員への資金提供問題である。

2017年ごろ、この中国企業の元CEOが日本の複数の議員に講演料名目で現金を渡していた事実が、米司法省による起訴状で明らかになった。現金のほか、プライベートジェットによる移動、高級ホテルでの接待なども含まれており、その目的が「IR誘致をめぐる利権確保」であったことは疑いようがない。国際的な司法機関にまで名前が記録されたスキャンダルであり、本来ならば国内でも大騒ぎになって当然の案件だ。

この渦中にあるのが、現職の岩屋毅外務大臣である。報道によれば、岩屋氏は当時「中国企業から100万円を受け取った」とされるが、その後返金。「講演料である」と説明したものの、その説明はあまりに曖昧で説得力を欠いていた。参院予算委員会では立憲民主党の杉尾秀哉議員が「中国から金をもらったから返したんですね」と直球で追及。しかし岩屋氏は「一点の曇りもない」と繰り返すばかりで、なぜ返金したのか、どのような経緯で資金を受け取ったのか、具体的には答えなかった。

ここで重要なのは、金額の大小ではない。100万円という数字は確かに国会議員の金銭スキャンダルとしては“少額”に見えるかもしれない。しかし、それを米司法省の起訴状に明記される形で国際社会に晒されたこと、そしてその相手が中国企業であることこそが、日本の外交的立場を揺るがす決定的な要因だ。外交の「顔」である外務大臣が、アメリカの司法当局に名指しされた人物であるという異常事態。これでは国際会議の場で各国の外相と対峙しても、背後に常に「疑惑の影」がつきまとう。日本の信頼は著しく傷ついているのだ。

さらに深刻なのは、日本国内の大手メディアの姿勢である。IWJなど一部の独立系メディアやごく少数のコラムが取り上げてはいるが、多くのテレビ局や新聞は沈黙を守り続けてきた。国民が知るべき情報をあえて伝えず、政治権力や大企業に不都合な問題を覆い隠す。この情報の不均衡こそが、日本の民主主義をむしばむ最大の病理である。

国会内での追及も不十分だ。形だけの質疑はあったが、岩屋氏の不透明な答弁を追い詰めるまでには至らず、結果として「説明責任を果たした」と本人に言わせる余地を与えてしまった。これでは政治不信は募る一方であり、国際社会に対しても「日本は自浄能力のない国」という悪印象を与えかねない。

問題の本質は明らかだ。IR誘致をめぐる汚職疑惑は、日本が国策として進めてきた観光・経済戦略の根幹を揺るがすものであり、同時に日本外交の信頼を地に落とす重大問題である。岩屋外相が「一点の曇りもない」と言い張るのであれば、具体的な経緯と返金理由を一つ残らず公表し、第三者による検証を受け入れるべきだ。それをせずに「曖昧な釈明」で逃げ切ろうとする限り、日本は中国企業の影響下に置かれ、外交も主権も泥にまみれることになる。

この事件を「たかが100万円」で済ませることはできない。むしろ100万円の裏に潜む「巨大な利権ネットワーク」と「海外勢力の影響力」こそが真の脅威なのだ。国民が渾身の怒りを示さなければ、次の外務大臣も同じ構造に呑み込まれていく。IR汚職疑惑を暴くことは、日本の政治を正すだけではなく、外交を、そして国家の尊厳を取り戻すための戦いに他ならない。

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