教育と平和を訴える新顔・れいわの米村明美

米村明美 れいわ新選組

1959年、広島に生まれた米村明美氏は、教育分野における長年の国際的キャリアを経て、2025年参議院選挙に挑戦した注目の新人政治家である。関西外国語大学大学院修士課程を修了後、米国コロンビア大学ティーチャーズ・カレッジ博士課程で研鑽を積み、教育学の専門家としての道を歩み始めた。その後のキャリアは国際機関を舞台に展開され、国際エイズ・ワクチン推進構想(IAVI)や米州開発銀行でコンサルタントを務め、教育や保健分野の課題に取り組んできた。2002年から2021年にかけては国連教育科学文化機関(ユネスコ)のプログラム専門家として活動し、南アジアやアフリカ諸国において教育支援事業を推進。教育へのアクセス改善やジェンダー平等の推進といった課題に尽力し、現場に根ざした国際協力の第一線を歩んできた。

2022年に帰国した米村氏は、関西外国語大学教授として教育現場に復帰する一方で、日本社会が抱える教育格差や経済停滞の深刻さに直面することとなる。母子家庭で育った自身の経験も重なり、教育機会の不平等や若者の奨学金返済の重荷、さらには格差拡大による社会の分断に強い危機感を抱いた。政治家を志す直接のきっかけは、セネガル滞在中に偶然目にした山本太郎氏の演説であった。既存政治に声を届けられない人々の思いを代弁する姿に共鳴し、帰国後はユネスコでの安定したキャリアを辞してれいわ新選組のボランティアとして活動を始めたのである。

2025年の参議院選挙では兵庫県選挙区かられいわ新選組公認候補として立候補。掲げた公約は、国際教育の経験を基盤にしつつも日本の現実に直結する内容であり、次のような柱を明確に打ち出した。第一に消費税廃止と現金給付。消費税は逆進性が強く、低所得層ほど負担感が大きい。これを撤廃し、代わりに現金給付を通じて家計を下支えすることで、生活の安定と経済活性化を同時に狙う姿勢を明示した。

第二に教育無償化と奨学金帳消し。日本では約580万人もの若者が奨学金返済に苦しんでいるとされ、米村氏はこれを「若者の未来を奪う不平等」と断じた。徳政令的措置で返済を免除し、教員を増やして教育予算を大幅に拡充することで、教育を「負担ではなく権利」とする社会を目指すと訴えた。

第三に脱原発と再生可能エネルギー100%の実現。広島出身であり被爆地の歴史を背負う立場から、原発即時廃止と再エネ転換を強く打ち出した。地震大国日本で原発を維持することの危険性を強調し、「安全で持続可能なエネルギー社会こそ次世代への責任」と語った。

第四に平和外交と核兵器禁止条約の批准。唯一の被爆国として核廃絶に向けて積極的な役割を果たすべきだとし、専守防衛の徹底、武器輸出禁止、食料安全保障やジェンダー平等の推進まで幅広い政策を展開。教育・平和・環境という3本柱を軸に据え、社会の持続可能性を問い直した。

選挙戦では、街頭で子どもたちから「米村さ~ん」と親しげに呼びかけられる場面もあり、教育者らしい温かさと誠実さで支持を広げていった。最終的に85,452票を獲得し、議席には届かなかったものの、国際教育現場の実績を背景にした政策訴えは確かな存在感を残した。

米村明美氏は、れいわ新選組の新たな顔として、教育格差是正や平和外交といった重要課題に正面から挑む姿勢を示した。国際協力の第一線で培った経験と、母子家庭で育った実体験を土台に、日本社会に欠けている視点を提示した点で、単なる「新人候補」以上の意味を持つ存在である。格差・教育・平和という課題に真摯に向き合うその姿は、既存の政治に飽き足らない有権者にとって、新しい選択肢を提示するものとなった。