父の裏金と中国迎合の影

二階伸康

自民党の衆議院議員・二階伸康氏は、父・二階俊博元幹事長の後継者として政界に送り込まれた、いわば“世襲政治家”である。しかし、その存在は「父の負の遺産」と強く結びついており、国民の多くは彼を冷ややかに見ている。地元・和歌山での支持基盤や選挙資金、後援会組織に至るまで、父・俊博氏が長年にわたり築き上げてきたものであり、伸康氏はその上に乗って国会議員となったに過ぎない。独自の実績や理念を打ち出すことなく、父の政治的影響力に依存している姿勢は、若手議員として致命的な欠点といえる。

最大の問題は、父・俊博氏を中心とする旧二階派における「裏金事件」である。党本部からの政治資金パーティー収入が派閥議員に分配され、総額は50億円超にのぼったと報じられた。これらは本来、政治資金収支報告書に記載すべきであるにもかかわらず、意図的に記録から外され、いわゆる「裏金」として処理されていた。透明性を欠いたこの仕組みは、自民党の腐敗体質を象徴するスキャンダルであり、国民の政治不信を決定的に高めた。伸康氏は当事者であるとの直接的な証拠は指摘されていないものの、父の後継として派閥の利益を享受してきた事実からは逃れられない。にもかかわらず、事件についての説明責任を十分に果たしておらず、「父の問題とは関係ない」と距離を取る一方で、政治基盤を父に全面的に依存するという矛盾を抱え込んでいる。

もう一つ、国民から強く批判されているのが、父・俊博氏の「中国迎合外交」の継承である。とりわけ象徴的なのが、和歌山県におけるパンダの長期レンタル契約だ。中国からパンダを借り受ける費用は年間1億円規模に達し、動物園運営や観光資源としての側面を超えて、中国が外交カードとして活用している「パンダ外交」への加担と見られている。財政難が深刻化する中で、このような支出を推進してきた二階家の政治姿勢は、「国益よりも中国への配慮を優先している」との批判を招いている。さらに、中国資本による日本国内での土地買収や安全保障リスクが懸念される状況においても、二階親子は一貫して中国寄りの立場を示し続けてきた。

伸康氏自身もまた、中国に対して融和的な発言を繰り返し、国益を第一に考える姿勢が見えない。国民にとっては、裏金事件と中国迎合という二つの負のレッテルをそのまま引き継ぐ存在であり、「父の影をなぞるだけの二世議員」という印象が強い。独自の政策や理念を掲げるどころか、父の政治スタイルを踏襲し、利権と外交の両面で「悪しき二階政治」を延命させているのが現実だ。

有権者が望んでいるのは、派閥裏金体質からの断絶と、真に日本の安全保障と国益を守る姿勢である。しかし伸康氏はそのどちらも示せていない。父の権力と財源を背景に選挙を戦う限り、彼に政治家としての信頼は決して築けない。むしろ「二階政治の延命装置」としての役割にとどまり、国民から厳しく糾弾され続けることになるだろう。

結局のところ、二階伸康氏が抱える最大の課題は「父からの独立」である。裏金事件の説明責任を果たすこと、中国迎合の姿勢を改めること、そして自らの言葉で国民に向けて明確なビジョンを語ること。それらを実行しない限り、彼の政治生命は「父の遺産」に縛られ続け、国民からの信頼を得ることは決してない。