自民党新総裁に選出された高市早苗氏は4日夜、党本部で就任後初の記者会見を行った。女性として初の自民党総裁となった高市氏は「国民に信頼され、安心して未来を託せる政党に再生する」と決意を述べ、最優先課題を物価高対策と明言しました。会見や政策の内容をこれまでの発言と変わりはなかったですが、総裁選挙で明言を避けていた部分に触れることもあったので、具体的な回答により以前の高市さんらしさを感じる場面がありました。消費減税は少し先になるが、軽油の暫定税率にも触れていました。
【物価高対策・生活支援】
高市氏は「困っている人を助けるのが国の仕事」とし、直近の物価高対策を「最優先」とし、次の施策を提示した。
・中小企業・小規模事業者:赤字で賃上げ減税を活用できない事業者に地方交付金を通じた補助を検討。
・農林水産業:飼料・資材価格の高騰に対して地域実情に応じた直接支援を実施。
・医療・介護:病院の7割が赤字、介護施設の倒産も増加していることから、年末の報酬改定を待たず補正予算で支援。
・燃料価格:ガソリン税の暫定税率と軽油引取税の引き下げを検討し、当面は補助金で対応。
財源は「税収の上振れ、基金、地方交付金の残高などを組み合わせて充当する」と説明した。
【外交・安全保障】
高市氏は「厳しい安全保障環境の中、日本が前に出て世界の課題解決に貢献する」と強調。
・日米同盟:首脳会談を通じて関係を強化。
・地域連携:日米豪比の協力を推進し、自由で開かれたインド太平洋に積極的に貢献。
・靖国神社参拝:外交問題化すべきでなく、慰霊と平和祈念の在り方は「適切に判断する」と述べた。
【連立・国会運営】
連立については「自公が基本」と述べ、すでに公明党代表に協力を要請したと説明。
自公以外の連携は「憲法改正、外交・安保、経済政策など基本理念の共有が条件」と指摘。
首班指名前の合意形成を希望しつつ、「相手のあること」として柔軟な対応姿勢を示した。連立の時期はわからないが、首班指名に間に合えば良いし、なるべく早い方が良いと話した。
【金融・財政政策】
日銀の2%物価目標は維持。「賃金主導のデマンドプル型のインフレこそ理想」とし、コストプッシュ型物価高で「デフレ脱却」とは言えないと指摘。
「政府・日銀の共同声明(アコード)」については「現状に即しているかを検討し、必要に応じ修正する」とした。
財政健全化については「否定しない」としつつ、「困窮する国民や事業者を助けることが先」と述べ、成長投資と健全化の両立を掲げた。特に2%物価目標に近づいたとしてもコストプッシュインフレでは安心できない、デマンドプルインフレを目指す必要があると示した。
【消費税・税制改革】
会見の後半、記者からの質問に対し高市氏は次のように回答した。
・消費税軽減税率の引き下げ:党税調で多数を得られず、自身も発言したが政権公約には入らなかったと説明。
・給付付き税額控除:2021年の総裁選公約で提案したもので「中低所得層を応援する方法」と位置づけた。社会保険料の逆進性を緩和できる利点を強調したが、制度設計や対象選定に数年単位が必要とし、今すぐの実施は困難と述べた。
当面は物価対策を優先し、税制改革は中長期課題として党政調で議論を深める方針を示した。
【党運営と人事】
幹事長人事は「自民党全体を見渡し、他党とも交渉できる人物」が条件と説明。
総裁選で争った候補者については「全員活躍を基本に登用する」と明言。
政治資金不記載問題では「司法や選挙で判断を受けた議員は職務に就くべき」とし、処分は想定していない。ただし「透明性を高め再発防止策を進める」と語った。
高市新総裁の初会見は、物価高と生活支援に全力を注ぐ姿勢を前面に出すとともに、外交・安保で日本が積極的役割を果たす決意を示した。金融・財政政策では「2%目標維持」と「財政健全化と生活支援の両立」を掲げ、税制では消費税や給付付き税額控除を中長期課題として提示した。政権運営は自公連立を軸に、国会での補正予算や燃料価格対策が直近の焦点となる。総裁選では隠していた牙が少し戻ったようにも見える。特に消費税減税に積極的であること(PB黒字化を優先しない)、ガソリンだけでなく軽油の暫定税率廃止も目指していることに驚いた。これが口だけでなく行動も伴うのなら、国民生活の改善・最近の躍進野党との協力・支持率回復も実現できるのではないかと感じる会見だった。