長野市長選(10月26日投開票)をめぐり、立候補を表明した平本浩一氏(59)が大きな炎上の渦中に立たされています。発端は2024年6月、タレントのフィフィ氏(X:@FIFI_Egypt)の投稿に対し、平本氏が「Go back to Egypt, utter ugly woman!(エジプトに帰れ、まったく醜い女め!)」と差別的なリプライを送ったことでした。この発言が拡散されると、国内外から批判が殺到。市長選の候補者としての適格性そのものが問われる事態へと発展しました。
平本氏は元世界銀行職員で、経営コンサルタントとしての経歴を持ちます。2024年の衆院選では立憲民主党公認で広島1区から出馬した経験もあり、政治経験は浅くない人物です。今回の長野市長選では「長野駅前再開発の白紙撤回」を主要政策に掲げ、市民に支持を訴えかけようとしていました。ところが、出馬表明直後に過去の差別的発言が再燃し、注目を集めた格好です。
9月8日の出馬正式表明後、フィフィ氏は自身のXで「絡んだこともないのに突然、汚い言葉で罵られました。長野市民の皆さん、こんな人間に票を入れてはいけません」とスクリーンショットを添えて警告しました。これにより、沈静化しかけていた問題が再び注目を浴び、メディアやネット世論の関心を集めることとなりました。
ところが、ここで平本氏陣営の対応がさらに批判を呼びます。事務所アカウントは「『こんな人間に投票しないでください』の発言は選挙妨害罪にあたると地元弁護士に相談しています。She has clearly crossed the line(彼女は明らかに一線を越えた)」と投稿。謝罪や説明ではなく、法的措置を示唆する“逆ギレ”のような姿勢を見せたことで、火に油を注ぐ形となりました。
ネット上では、以下のような批判が相次ぎました。
「私は有権者ですが、あなたには投票しませんし、周囲にもおすすめしません」
「子どもの手本となるべき大人が謝罪もせず、逆に脅迫するとは、市長を務める器ではありません」
「ヘイトスピーチを開き直る態度は信用を失うだけです」
これらの声に共通しているのは「謝罪も説明もなく、むしろ相手を攻撃した」という失望感です。候補者としての姿勢に信頼を寄せられず、「自分は許されるが、他人は許さない」という二重基準が浮き彫りになりました。
また、平本氏が持ち出した「選挙妨害罪」についても、多くの法律関係者から疑問の声が上がりました。公職選挙法上、選挙妨害罪の成立には「公示後の選挙活動への妨害」が前提となります。今回のやり取りは出馬表明直後であり、公示前の段階です。したがって法的根拠に乏しく、法的脅しとしての要素が強いと指摘されています。
差別的な発言を行った事実に対して説明責任と謝罪を果たさず、逆に「法的措置を取る」と言い出す態度は、有権者に不誠実と映るのは当然です。政策以前の問題として「人間としての資質」「リーダーにふさわしいかどうか」が強く問われる事態に発展しました。
もちろん、フィフィ氏自身も移民反対の姿勢を取るなど発言が賛否を呼ぶ人物であり、アンチも少なくありません。しかし、今回の件は個人の思想の是非ではなく、「人に対して差別的な言葉をぶつけることは許されるのか」という根源的な問題です。そしてその一線を越えてしまったのは、明らかに平本氏の方でした。
市長選において有権者が最も重視すべきは「市民の代表として信頼できる人物かどうか」です。差別的発言を反省せず、逆に相手を脅すような候補者を支持できるかどうか。今回の炎上は、単なるネットの騒動ではなく、長野市民の判断を大きく左右する可能性を持っています。政策論争に入る前に、候補者としての資質そのものが試されているのです。